添削例(公務員)

添削現場を再現!

[問題]

地域コミュニティは、地域住民が助け合って生活を営む基盤であり、暮らしやすい環境を保つために重要な役割を果たしています。しかし、現代の社会では、地縁的なつながりが希薄化し、地域コミュニティが衰退する傾向が見られます。
 このような状況がなぜ生じているのか、主な要因を説明した上で、地域コミュニティの活性化について、あなたの考えを論じなさい。
 (特別区Ⅰ類)

[答案例]※読みやすくするために、改行を多くしています

地縁的なつながりがなぜ希薄化しているのか。それは、一言でいうと、個人主義というものが日本人の心の中に深く浸透してきているためである。
世界有数の経済大国となった日本では、国民の生活は収入面ももちろん、社会保障も充実してきている。
欧米とは一線を画する治安面の充実も、個人主義の確立に寄与している要因の一つと言える。
例えば、アメリカにおいては都心部でも多くのスラム街を有し、生活に困る者の割合は、日本と比べても非常に多いが、日本ではそれがない。
地域住民で協力し合うことには、様々なプラス面があるが、一方で人間関係の煩わしさも伴うことになる。
上に述べたような「近所に助けてもらわなくてもいい」という確信が国家的な情勢により生まれた今、日本人は一人で生きることを選択し始めたと言える。

 ところが、個人主義を優先し地域コミュニティが衰退した結果、日本人は自らの命が危険にさらされるという現実に直面し出している。
主な例を挙げれば、疾患・犯罪・災害、この3つに対して非常に脆弱になってしまった。疾患に関しては、一人暮らしの高齢者に限らないが、自宅で突然倒れた時などに、普段から意識しておくと訪ねやすく、気付き易いということがある。
犯罪については、強盗・空き巣が起こった際に、近所の人が隣人に関心があれば気付き易く通報しやすいということがある。
災害に関しては、やはり地域の協力が減災において欠かせない。
最近記憶に新しい東日本大震災では、津波に対する逃げ遅れが被害拡大の一因となった。減災に関して知っている者が、知らない者を導いて避難行動を迅速化するような流れが、地域において自然に構築されるべきである。

地域コミュニティの活性化にあたっては、トップダウン・ボトムアップ、この両方のアプローチが重要だと考えられる。
つまり、前者としては、住民に対して講話・説明の場を設ける、ポスターを貼るなどして、啓蒙していくことが考えられる。
講話の場においては、著名人を招くという手法も効果的だろう。
次に、後者についてだが、コミュニティの活性化には、やはり地域住民の協力が欠かせない。
地道な策としては、伝統的な回覧板を使い、コミュニケーションを深めてもらうようにすることや、火の用心を伝える巡回活動をしてもらうのがまず一つで、更に防災活動の一環として、出会う人に挨拶を必ずしてもらうといったことなどが考えられる。

 確かに、個人主義によって一人一人は自らをより大切に思うようになったかもしれない。
しかし、今まで述べた内容をふまえると、他人を思いやる余裕があってこそ、自分を大切にする以上に、大切にされることになる。
そうした地域コミュニティ活性化のため、ひいては現代社会に人間性を取り戻すための取り組みが、今実行に移されるべきだと私は考える。(1150字)